【資料の概要】
1912年に刊行された『The Deathless Story of the Titanic』の第1版。

【製本構造】
 一折りステープル中綴じ。表紙には微塗工(コート)紙が用いられている。

【処置前の状態】
 表紙の折り目および周縁部に欠損、破損、折れ、脆弱化、塗工剤の剥離などが見られ、表裏の表紙が折り目部分で分離しかかっている。これらの他、染みやステープルによる錆の移行も見られる。綴じのステープルは既に失われ、綴じはバラバラの状態。
 本文紙は、酸性劣化による茶変色および脆弱化が著しく、特に紙力を失った周縁部には破損、欠損、折れなどが生じている。また、表紙と同様にステープルから発生した錆の移行も見られる。処置前pH3.0~4.0

【処置方針】
 表紙および本文紙の損傷/劣化部分への適切な繕いや補強を行い、脱酸性化処置などによって紙を健全な状態にすることで長期的な保存とともに、手にとって「読む」ことを可能とする。

【主な処置内容】
①表紙、本文紙表面上のチリやホコリ、付着物などを刷毛、クリーニングスポンジで除去
②表紙や本文紙に移行した錆を除去
③サクションテーブル(吸引装置)を使用して本文紙の水性洗浄(汚れが抜けきるまで繰り返す)

④脱酸性化処置(炭酸水素マグネシウム水溶液)
⑤表紙の欠損、破損の修理と折れを補強
⑥本文紙のリサイジング(メチルセルロース0.5%)
⑦本文紙の欠損、破損の修理
※表紙・本文紙の修理・補強には、利用時に違和感のない厚みと、外観的に目障りにならない(目立たない)色味に染めた機械漉き楮紙等を適宜使用。

⑧ページ毎にフラットニングを行った。
⑨最終的な脱酸をブックキーパー法にて行った。(処置後pH8.0~9.0)
⑩麻糸による綴じ直し
⑪フォルダ作成(AFハードボード、ピュアガード)

【処置後の状態】