1.劣化
 羊皮紙(パーチメント、獣皮紙)は化学的な要因による劣化については鞣革よりも比較的丈夫といわれ、製造工程に関連した劣化の方が多い。具体的には、19世紀に脱毛促進のために使用された酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫化ナトリウムが皮から細胞組織が除去されすぎて品質低下を招き、結果として19世紀以前に石灰溶液への浸漬のみで製造された羊皮紙よりも脆弱なものとなりました。
 光の影響によって過酸化水素が発生し、ゼラチン化すると線維の結合が破壊されて裂けやすくなります。ゼラチン化した羊皮紙が水と接触すると分解して薄片化します。また、十分な水分が吸収できなくなると、硬化・収縮して線維が自由に動かなくなります。
 熱と湿度変化に弱く、30℃以上で元に戻らないような変化が発生し、湿度は低いと乾燥して裂けやたわみが現れ、逆に湿度が高いと波打ちが発生します。

2.保存手当て
 羊皮紙は何世紀も保存できる素材ではありますが、水、熱、カビ、日常的な使用に弱いという非常にデリケートな素材ともいえます。従いまして、例えドライクリーニングであっても線維間に汚れが入り込んだり、線維が傷ついたりする可能性がありますので、基本的に羊皮紙に劣化や損傷が生じた場合には専門家にご相談されることをお勧めいたします。

同志社大学図書館 徳富文庫「ケルムスコット・プレス」への保存修復処置