実験用サンプル資料として手に入れた古新聞の中に下記のような興味深い記事がありました。

東京日日新聞 昭和11年3月27日

聲の二・二六事件
レコードに殘る
『兵に告ぐ』の名放送
その日の臨時ニュースを一市民が完全に録音

雪の四昼夜を不安と焦燥のうちに閉ぢ込めた二・ニ六事件最後の日二月廿九日の朝、九段の戒厳司令部に置かれたマイクロフォンから九千万同胞の胸を強く強く打った臨時ニュースの放送、香椎戒厳司令官の涙の諭告『兵に告ぐ』は稀有の名文、慈父の如き司令官の言葉、涙にふるへる中村アナウンサーの聲、耳朶に焼きつけられたあの放送―市民が五感を耳にして聴き入り、街といふ街が皆ラヂオの聲に泣いたのだった。もう一度聴きたいこの歴史に殘る司令官の言葉もスピーカーを流れ去った瞬間、空間に消えて再び聴くことは出来まいと思っていたのに、はからずもあの『兵に告ぐ』の名諭告以下すべての発表ものが一市民の手で鮮かにもレコードに録音されてちゃんと残されていたのだ。

以下、記事の抜粋
渋谷区在住三井物産社員山下文雄(35)は、戒厳司令部発表ニュースを聞いているうちに、ラジオにレコード吹込装置の付いているのに気付き、「よし、いま放送している臨時ニュースをレコードしてこの大事件を永遠に記念しよう」とラジオを聴きながら要所要所を録音した。『兵に告ぐ』のほか、市民への避難注意や、叛乱部隊帰順の経過などの戒厳司令部の発表はそれぞれ明瞭に録音されて歴史的大事件の得難い声の記録をなしている。
このラジオは手製のラジオでスピーカーを通せずに直接録音されるようになっていた。吹込用のレコードは外国製のものを使用。あの日あまりの感激に一度ラジオで聞いてから思いついてすぐレコードしておこうと決心して、繰り返し行われた放送をそっくりキャッチした。録音の実験のつもりだったが、よく録音できているので永久に保存したいと言っている。

この報道に驚いた戒厳司令部は、即座に持ち出し禁止処置。録音盤(アルマイト製原盤)は山下家で厳重に保管された。事件から15年目の昭和26年2月24日に山下氏の弟がNHKに原盤を寄贈し、今に至っている。

↓こちらから聞けます。
NHKアーカイブズ

 

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