書籍(洋装、和装、図書資料、雑誌)、紙資料(文書、地図、図面、ポスター)、紙作品(版画、デッサン)などの保存修復処置および予防的保存処置

西洋古版地図への保存修復処置

【所蔵】 明治大学図書館 蘆田文庫

【資料名】 IAPONIAE INSVLAE DESCRIPTIO(ティセラ日本図)

【制作年】 1595年

【制作地】 アントワープ

【資料の概要】
紙本銅版画で水彩絵具による手彩色が施されている。ヨーロッパ製地図の中で、最初に日本が単体で描かれたもので、イエズス会士のポルトガル人地図制作者ティセラによって制作された。本紙は組成不明の台紙マットに両面粘着テープで固定され、厚紙(カード紙)の窓とカバーが取り付けられている。裏面にテキストが印刷されていることからも、本来は製本された地図帳の一枚であったことが分かる。裏面中央には、隣接する折丁に巻き付けるための帯状紙片(足)が貼付されている。黒インクと蔵書印の耐水性は良好だが、手彩色部分の赤、黄色、オレンジ、ピンクの各色が水に敏感で耐水性が低いことが分かった。

【損傷/劣化状態】
周縁部や裏面の紙片が貼付されている箇所には少々茶変色が見られ、所々でフォクシングも生じている。画面内とマージン部分での紙の伸縮率の違いなどにより、マージン部分に波打ちが見られる。本紙上辺の左右角には折れ、下辺中央には破損や欠損が見られる。四隅にある粘着テープの接着剤からは染みやテープ痕が見られ、それらの中には薄層化している箇所もある。

【処置方針】
本紙を台紙から取り外し、将来的にさらなる劣化要因となりうる粘着テープおよび本紙繊維間に残留している接着剤を除去する。長期保存に向けた本紙のコンディション改善のために、水性洗浄や脱酸性化処置を行い、損傷に対しては必要な手当てを施す。今後の安全な取り扱いと酸化劣化を防ぐためにエンキャプシュレーション(ポリエステルフィルム封入)を施し、さらに中性厚紙で製作した資料が取り出しやすい前開き被せ箱に収納する。なお、裏面中央にある製本時の名残でもある帯状の紙片は、本資料のアイデンティティを証明する貴重な証拠としてそのまま保存することとする。

【保存修復処置】
①本紙を台紙からステンレス製のヘラで慎重に取り外した。
②粘着テープを除去し、刷毛や練ゴムで全体のドライクリーニングを行った。
③サクションテーブル(減圧式吸引装置)上でテープ痕を有機溶剤を用いて除去した。
※サクションテーブル(減圧式吸引装置)・・・パンチングテーブル面全体で吸引できる機材で、水を上から噴霧すれば、作品・資料の紙中にある汚れを裏側へと抜くことで洗浄ができる。そのほか、水性脱酸や漂白も同様にして行うことができる。強制的に吸引することによって各々の処置を短時間で行えることから、水に対してデリケートな素材に対しても使用することが可能。また、弊社で使用する「減圧式」は、掃除機で単に空気を吸引するだけのタイプとは異なり、テーブル内部を真空に近い状態にすることによって吸引力を発生させるものでより安全性が高い。
④サクションテーブル上で水性洗浄を行い、水溶性の汚れや酸性物質を短時間で洗い流した。
⑤本紙に生じた破損、欠損、折れに対して厚みや色味を合わせた和紙で修理/補強を行い、欠損補填箇所には色鉛筆にて色味の最終的な微調整を行った。
⑥防水透湿性素材で緩やかに加湿して本紙全体を伸ばし、吸取紙に挟んでプレスして波打ちを修正した。
⑦彩色部分に影響しないように裏面から脱酸性化処置を行い、エンキャプシュレーションを施した。

【処置後の状態】

【参考文献】

文化遺産オンライン http://bunka.nii.ac.jp/index.php

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