染みの原因は色々あります。原因は必ずしも明らかになるとは限りませんが、原因がわかれば修復処置の決定に役立ちます。
今回、20世紀刊の絵本に発生した黒い染みを除去してほしいとの修復のご依頼を受けました。絵本に使用されている紙は、その絵本専用に抄紙されたもので、本文紙だけでなく、表紙、箱にも使用されています。そしてその黒い染みは、表紙や箱、本文紙すべてに見られました。
そこで、染みの原因を調べるために作品の染みの箇所を顕微鏡(100倍)で見てみたところ、染みの中心に黒や茶色の物質(おそらく金属)があることがわかりました。これらの異物は紙の表面だけでなく繊維の中にも確認できることから、製紙の段階で混入したと思われます。たとえば、製紙工程で使われる水の中に入っていたり、機械の金属部分の摩耗から出る微細な粒子が紙料に混入したりしたと考えられています。
紙の中に様々な異物が混入していることは珍しいわけではありませんが、作品を不適切な環境下で保存していると、異物によっては紙の劣化につながります。たとえば、金属の異物が混入した作品が湿度の高い環境に置かれると、金属の化学変化が促進されて紙に染みができることがあります。その場合、染みの除去で漂白を行ったとしても、原因物質が紙に残ったままでは、再び染みが現れる可能性があります。今回も黒い異物が染みの発生に関係があると考えられるため、染みに対して次のような修復処置を行いました。

①実体顕微鏡を使って、黒い異物をできる限り除去
②洗浄(以下の処置は染みの部分のみ)
③漂白
④洗浄
⑤アルカリ化
⑥作成した保存箱に収納(小さな環境作り)

上記の処置の結果、染みは軽減されました。しかし、すべての異物を完全に紙から除去できたわけではありませんので、今後適切な環境(特に低い湿度のもと)で保存することが染みの発生の予防となります。

 

この記事を読んだ方は次の記事も読まれています