ゴシック製本について
15世紀終り頃になると、本の生産が増えて修道院内の製本職人の仕事が増加し、修道院以外でも市井の製本職人が拡大した市場に加わるようになった。また、活版印刷が発明されると、本の生産が急増(15世紀後半で1800万冊)し、製本職人は仕事や材料の質を落とさざるを得なくなり、さらに本の多様性にも応じる必要がでてきた。
(1)本文と見返し
紙の導入当初は、強度に対する不安感から、コプト製本のように折丁の中心に綴じの補強としてパーチメントの細片(写本の反故紙など)が使われた。また、各折丁または最初と最後の1~2折丁間にパーチメントのシートを混ぜて使用したりもした。紙は写本制作時にはサイジングが必要であったが、活版印刷では必ずしも必要ではないものの、印刷面だけが波打ち(凹凸)が出ていた。サイジングがなされていない紙は、製本職人が印刷された紙をサイジング(膠+明礬)し、乾燥後にハンマーで叩いて平坦化された。この平坦化により折丁背(折目)も叩かれるため、本文ブロックは背が前小口よりも薄くなる。これは留め具を付けると前小口が軽く押されるため、留め具付きの本に向いていた。
見返し紙のオリジナルはあまり残っていなく、構造も表と裏では異なることがある。一番外側の折丁が見返しとなるものと、見返しだけの折丁が加えられるものの2種類に分類できる。素材に紙が使われることは稀で、大体パーチメント(写本の反故)を使用し、継ぎ合わせて使用する場合もある。
(2)綴じ
支持体の本数は2~9本まであり、これは時代・天地の寸法と関係があると思われる。カロリングとロマネスクまでは、支持体の本数と本の寸法は無関係だったが、ゴシックになってプロポーションを気にするようになり、大型の本は支持体の本数が増える傾向にあった。また、大きさだけでなく、本の厚みにも影響されるようになった。
綴じ穴の開け方は、スリットか穴の2つに分類できる。欧州大陸よりイギリスの方で穴が多い。ゴシック後期では穴が多い。
支持体の素材は、これまでの時代よりも種類が豊富になる。植物繊維紐、革紐(基本的に白い革:雄牛、鹿、羊、豚)などを使用。時代や地域性があり、イギリスでは15世紀に植物繊維紐(主にヘンプ)が増え始め、16世紀後半には植物繊維紐が主流となる。また、フランスでは14~15世紀に植物繊維紐の使用はほとんどない。
綴じ方は、ヘリンボーンやStraight packed sewingなどで、端結びはリンクステッチ。花布まで一緒に綴じることもあるが、時間短縮のためと思われる。
(3)背の処理
綴じの構造が弱くなり、綴じ糸の質も低下したため、綴じの補強と背貼り(革やパーチメント)の貼付のために、背固めとして膠が塗られ始める。
膠の使用は背の丸みを維持するためかもしれない。カロリングやロマネスクでは背は平ら(または凹)であったが、ゴシックでは背に丸みが出てくる。ハンマーでバッキングがされたような痕跡もあり、自然に丸みができたというよりも、狙って行われたと思われる。
背貼りは、支持体間に背の幅分だけ貼付されていることが多い。他には、表紙まであるもの、支持体部分だけくり抜いている(スロットタイプ)もの、櫛型のものなどがある。背貼りされていないものも結構あるが、表紙まであるものは表紙と中身の接続が補強される。櫛型はイタリアやフランスで多い。材料は、革(ほとんどシャモアで稀に豚)、パーチメントなど。
(続く)


この記事を読んだ方は次の記事も読まれています

[`evernote` not found]