(7)表装
革が中世後半までは、最も主要な材料。総革ばかりでなく、半革(1/3程度)もある。また、高価なビロードもしばしば使用され、パーチメントはリンプ装以外ではあまり使われない。革の種類は、シャモアがあまり使われなくなり、その偽物(トーイングかオイル鞣しの羊革を裏返したもの)に取って代わられた。また、植物タンニン鞣しの仔牛、トーイング豚革が普及していった。
羊や仔牛革に対してしばしば染色が行われた。サップグリーン(クロウメモドキの実から抽出した緑色染料)、サフラン、ブラジル木(赤色)、没食子酸インクなど(明礬で色止め)を表装の前後どちらかの段階で染色した。
接着剤には小麦粉糊(痕跡がある)を使用。昔のレシピによると、ライ麦糊と膠を混ぜたものを主に豚革の接着に使用した。革の貼り込み方法は、革を十分に湿らせて柔らかくしてから、捨て糊をした後に背には特に糊を多めに塗って貼り込まれた。
折り返しにV字の切り込みがある場合があるが、これは皺なく折り畳めるようにするためか、革漉きしていない革の堅さのためか(豚革が一番多い)?また、折り返し付近に表紙ボード上にクロスハッチングの線があるものは、革の接着を向上させるために行われた。折り返し部分の革漉きは15世紀ではほとんど見られないが、16世紀に広まった。その方法には銀面からと肉面からの両方がある。銀面からの場合は貼り込んだ後に行われたか?)
ゴシック製本の特徴である丸みのある背とダブル背バンドのため、革の接着を向上させるためにプレスに挟んでコードなどを巻いて圧着させたと思われる痕跡がある。
Overcoverと呼ばれる通常の表装にプラスされたものもある。
①Protective overcover of leather : 重い本の小口保護。セーム革を縫い合わせたり、接着剤や金属製留め具を使用して取り付ける。
②シュミーズ : 革か布のカバーで、取り外しが可能であった。貴族女性たちの本などに使用。
③ガードルブック : 聖職者が所有する小さく軽い本で、腰から下げて持ち歩くのに便利。15~17世紀のドイツに多い。セーム革が多いが、中には仔牛や羊もある。
④Overback : 表装材保護用。セーム革などを使用。
(8)装飾
ロマネスクまでに空押し技法のレベルが上がり、ゴシックになると新しい技法が使われるようになる。
Cuir-ciselé : 金属板の浮き彫り装飾から着想を得て、革職人が行った技法で、欧州中で14世紀初めからナポレオン時代まで行われるが、本に対しては15世紀のドイツ・オーストリアなどが中心であった。主に仔牛を使用し、その他山羊や豚なども使用した。方法は、まず先の鈍いもので湿った革面に下書きを描き、そのアウトラインを両刃の広角の刃物で切る。次にパンチ(0.7~2mm穴)で多くの刻印を背景につける。
空押し : 15世紀後半(1467~1484年頃?)になると、時短のためブロンズや銅製のロール、ブロック、パネルなどの道具が導入される。エチオピアやイスラムでは熱を用いず(湿らせた革に打ち叩く)に行われたが、これは木製パネルが熱に耐えられないからで、同様の方法は15世紀後半でもドイツやフランドル地方で見られる。恐らく熱を用いた方が時間がかからないため、好まれたと推測される。
金箔押し : 起源は不確定だが、東方からベネツィアやナポリに入ったと思われる。ナポリには1480年代から金箔押しに関する史料が残る。純金は輝きが何世紀も維持するが、合金(銀・銅・錫・亜鉛)は変色しやすい。銀の比率が高いと、すぐに黒く変色するので、黒の絵具と間違えやすい。
①punch-gilt roundels ‘alla fiorentina’ : 革に小さなジェッソや石膏を置き、ニスを掛けて金を塗る装飾方法。金のほかに赤色や黄色、緑色などもある。
②brush gilding : 空押しに金の絵具を塗る装飾方法。15世紀後半にイタリアやフランスで金箔押しと共に行われる。光り方が鈍く、空押しの線からはみ出すこともあるので、すぐに見分けられる。
③wet method  : 卵白のようなメディウムを表面に置いてからすぐに金箔を置く方法。
④dry method : 卵白または油分の入ったメディウムを表面に置くが、かろうじて粘着性があるという時点まで乾かしてから金箔を置く方法。
(続く)


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