【所蔵】早稲田大学戸山図書館
【資料名】キネマ旬報 49冊

【処置方針】
 ステープルの錆の除去と脱酸処置によって将来的な劣化要因を取り除き、丈夫な麻糸による綴じ直しによって構造的補強を図る。なお、未綴じ本はそのままとする。

■全49冊の中で製本方法が4種類あり、損傷/劣化状況や処置方法が異なるため、その種類ごとにご紹介いたします。

1)『キネマ旬報 №61』(一折丁、未綴じ)1921年、東京
【処置前の状態】
①表裏の表紙ともに部分欠損、破損、折れ、ノド内側に剥離、そのほかノド元下辺に青い染みがみられる
②折丁背には損傷があり、本文紙には軽度の破損、折れなどがみられる

【主な処置内容】
①ドライクリーニング
②本文紙、表紙の部分欠損、破損、折れの修理
③表紙の背部分の補強用に和紙を貼付

2)『キネマ旬報 №89』(粘葉装風)1922年、東京
【処置前の状態】
①表裏の表紙ともに破損がみられる
②折丁背の状態は良好で、本文紙は軽度の破損と無理にページを開いたため(P.12)破れている箇所がある。

【主な処置内容】
①ドライクリーニング
②本文紙、表紙の部分欠損、破損、折れの修理
③表紙の背部分の補強用に和紙を貼付

3)『キネマ旬報 №92』(一折丁、ステープル中綴じ)1922年、東京
【処置前の状態】
①表裏の表紙の接続は一度分離したものを、隣接するページに糊付けされて接着している。
②折丁背の状態は良好だが、本文紙にはステープルの錆が移行している。

【主な処置内容】
①ドライクリーニング
②解体と錆の除去
③本文紙、表紙の部分欠損、錆穴、破損、折れの修理
④表紙の背部分を和紙で補強
⑤麻糸で綴じ直し
⑥表紙と中身の接続するためノド元に和紙を貼付

4)『キネマ旬報 №121』(複数折丁、ステープル平綴じ)1923年、東京
【処置前の状態】
①表裏の表紙の接続は脆弱化しており、表紙自体には破損、折れ、錆がみられる。
②折丁背には損傷があり、本文紙にはステープルの錆が移行している。

【主な処置内容】
①ドライクリーニング
②解体と錆の除去
③本文紙、表紙の部分欠損、錆穴、破損、折れの修理
④表紙の背部分を和紙で補強
⑤麻糸で綴じ直し(リンクステッチ)
⑥表紙と中身の接続するためノド元に和紙を貼付