製本用接着剤について(8) 膠その3

 膠を使用する上で注意することは、まず目的に合った膠の選択と信用のおける店の新しいものを買うことです。それを溶解するには、1.5~2倍の水に数時間浸けて膨潤させてから、50~60℃で溶解させます。加熱には直火を避け、湯煎などで行い攪拌もあまり強すぎないようにしたほうが良い。高温にしすぎたり、繰り返しあるいは長時間の過熱は分解劣化を起こすので、できれば使用のつど必要量のみを用意するのが理想的です。残ったものはそのまま冷却した後、冷蔵庫などで保管すればある程度の間は保存でき、次に使用するときにはそのまま湯煎で溶解します。また加熱中に水分が蒸発するので、適当に補給して必要な濃度を保つようにします。
 
 市販品の中には腐敗、黴の防止のための防腐剤(フェノールホルマリンサリチル酸硼砂など)が添加されているものがありますが、安全のためには無添加のものを使うべきでしょう。添加物が多少なりとも紙や革に悪影響を与えないとは限りません。また、フレキシブルグルーといわれる固化後も柔軟性のある膠がありますが、これは多くの場合、保湿、柔軟剤としてグリセリンなどが加えられているので、黴が発生しやすく使用しないほうが良いでしょう。また液ニカワという加熱溶解の不要な、そのまま接着剤として使えるものがあります。これは膠に塩素、硝酸などを加えて凝固を防いだもので、酸性度が高く、保存を目的とする製本や修復には使えません。