綴じ糸と蜜蝋

 蜜蝋とは、ミツバチの巣を構成する蝋を精製したもので、特徴的な黄土色はミツバチが持ち運んだ花粉の色素の影響を受けているという。製本作業において糸綴じを行う際にこの蜜蝋が活躍する。綴じの作業を行う前にこの蜜蝋に綴じ糸を何回か通す(塗る)ことによって、本文紙の綴じ穴を通る際の通り(滑り)を良くしたり、糸がほつれてくるのを防ぐ役割がある。つまり、綴じの作業時に本文紙に無用なストレスが発生するのを防ぎ、糸を長持ちさせることで保存性の向上にも直結する。
 このような些細な手間を惜しまないことで、大切な本を長持ちさせることができる。