豚革装の書籍

 1951年に東京で出版(初版は1947年。印刷、製本ともに国内)された書籍の表装革の拡大写真です。毛穴(毛包)が三角形に並んでいる豚革(イノシシ科の動物)の特徴を非常によく表しており、毛が斜めに生えている様子も確認できます。ただし、鞣革法については不明です。

 豚革装の書籍といえば、明礬鞣しの豚革を用いた製本が中世以来ドイツで多く行われており、それらを修復作業でお預かりしたり展示されたりしているもの等でもよく見かけますが、日本国内で製本されたもので表紙に豚革を用いたものはあまり記憶にありません。確かに、豚革に関しては食用豚を用いて、国内で唯一自給できる革(沖縄を除くと豚の皮を食べる食文化が育っていないことも要因らしい)ということを聞いたことはあるのですが、恐らく書籍の表装革として用いられる事例は少ないはずで、そういった書籍に出会えたことは幸運でした。

【参考】
「平成30年度製革業実態調査報告書」(一般社団法人 日本皮革産業連合会・一般社団法人 日本タンナーズ協会)