ナフタリンペーパー

 ナフタリンペーパーは、資料を汚染する可能性があるとの理由から、国内のある機関では1975年頃に使用を見合わせていたという話があったり、また別の機関では挟み込まれていたものを取り除く作業が近年行われていたという例もあります。弊社が修復作業のためにお預かりする資料の中にも、現在でもナフタリンペーパーが挟み込まれていたり、収納箱内に残されていたりするケースが見受けられます。こうした場合には、所蔵機関の了承を得たうえで除去しています。
 ナフタリンペーパーは2000年代頃まで一部で販売されていたようですが、不明な点も多いため、国立国会図書館デジタルコレクションで「ナフタリンペーパー」を検索し、得られた記述を年代順に整理してみました。

【1960年代】
●「近世史料の整理について 早大図書館・杉本冨士夫…消毒につきましては、最近真空消毒器が私どもの図書館に入りましたが、それまではクロールピクリンによる燻蒸殺菌を行ってきました。これには密室・長持・茶箱等を用いるわけですが、経済的でありまた殺菌力が強い代わりには相当の臭気を覚悟せねばなりません。消毒した後にはナフタリンペーパーを挿入して1年に1回取り換えることにしております。(私大図書館協会会報47 1966)」

●「古書の消毒、殺虫機具について…ホルマリン使用法は人体に有害であり、赤外線方法は密閉すると本が焼ける欠点があって国会図書館でも実際には用いていない。結局は日光が一番有効である。冷蔵庫を利用してアルコール使用法を行い火災の危険があった。またナフタリンペーパーを試みたが費用が嵩む難点があり、やはり日光が良い。(東海地区大学図書館協議会誌13 1968)」

●「装備―ラベルは一冊ごとに表紙右肩に(一冊一番号)貼る。さらに帙の背にも一枚貼る。ポケットは帙にのみ付け資料に直接には貼らない。ナフタリンペーパーを必ず入れること。(大学図書館研究集会報告書6 1968)」

【1970年代】
●「虫干しは風通しの良いところを選んで、図書の小口がパラパラと開いた形にして並べ、同じところがさらされることのないようにしながら、数時間日光にさらす。次に、ホドジン、ジクゾール、樟脳などの薬品を図書に挿入する。現在はナフタリンペーパーが販売されているので、これを挟むと手軽で便利である。普通、帙などに入れた和本はかえって紙魚の繁殖を助けるといわれるが、薬品を挿入した図書は、帙や箱などに入れて密閉した方が薬効が高い。最近はビニール袋が手近にあるのでこれに入れると良い。(講座現代学校図書館第5(1970))」

●「各書庫のホルマリン及びナフタリンペーパーによる防除が有効であり、ほとんど害虫が見当たらなくなった。(琉大図書館年報1970-71)」

●「資料の前部と後部(厚いものには内部にも)にそれぞれナフタリンペーパーをはさむ。(琉大図書館年報 1975年度)」

●「和本、漢籍等はかなり以前から虫害におかされていて、一時は薬品(ナフタリンペーパー)処理をしていたが、館員の健康上の問題が発生し、現在は使用していない。(武蔵大学図書館白書1976)」

●「1977年10月26日「発注から受入処理まで」の情報交換…書籍の虫除けについて ナフタリンペーパーの発禁。何か良い方法はないか?(私大図書館協会東地区研究部第4期1978)」

【1980年代】
●「白蟻防除についてはホルマリン液による殺虫を施した。郷土資料及び戦後資料の防虫についてはホルマリン液によるよりもナフタリンペーパーが効果があることが分かった。(琉球大学三十年 1981)」

●「ナフタリンペーパーの使用について…化学的防虫剤を直接古書、古文書に接触させますと、長年の質に変退色する恐れがありますので、ナフタリンペーパーの挿入使用は賛成致しかねます。使用する場合には戸棚、戸箱の中に入れて直接古書、古文書に接触しないようにしてください。この場合の使用量は、15-20mg/L程度で実験的には十分ですが、通風のある場合は効力の安全をみてこの倍量とします。ただしこれは常時必要な量ですから、毎月調べて減量している場合は補充しなければなりません。(文化財の虫菌害7 1983)」

●「古文書1冊に対し2-3枚のナフタリンペーパーを1年に1度交換している程度。(文化財の虫菌害8 1984)」

●「本の虫・カビとその対策(森八郎)…わが国でもナフタリンペーパーが一部で使用されているが、長期にわたる化学的影響を十分試験するまでは保証できない。貴重な本を変色汚染しては取り返しがつかないので、もっと慎重に取り扱われることを強く望む。(大学時報33 1984)」

●「ナフタリンペーパーからパナプレートに替えるには?…ナフタリンペーパーから他の薬剤に変更するときは、前に使用していた薬剤を十分に除去してから次の薬剤を使用した方が良い。樟脳とパラジクロロベンゼンが共存すると、固形の薬剤が液状となり、書籍等に染みを着生する危険がある。(文化財の虫菌害8 1984)」

 また、専門誌へのナフタリンペーパー販売会社による広告も確認することができました。
●(有)北上商会の広告(図書館雑誌62(3)(531)1968)…本の虫よけにナフタリンペーパー(紙晶脳) しみがつかず、持続効果が大きいのが特長。ナフタリンを紙状にしたもので、本の厚さによって1-2枚を前後にはさむだけでよいので、よろこばれております。宮内庁、日本大学、東京商船大学、関西学院大学など各図書館でご使用いただいております。100枚1束特価270円

●キハラ(株)の広告(図書館雑誌89(6)(859)1995)

  1970年代半ばにはその危険性を認識していたところもあれば、同時期にまだまだ挟み込み作業を続けているところもあったり(最近聞いた話では、1970年代の初め頃に貴重書を新調した箱に収納するのに合わせてナフタリンペーパーも一緒に入れたという。)、続く年代でも同様の現象が同じ専門誌上でも起きています。情報の共有が容易にできる時代ではなかったので仕方のないことなのかもしれません。 
 取り除く作業も規則性をもって挟み込まれたものはなく、劣化して茶色くなり同じく茶変色化したような本文紙との見分けがつきづらいものも多いため、結局全ページを確認せねばならず、想像以上に手間もかかるというのが実情です。