2.デンプンの糊化
デンプンは冷水には溶けないが、次第に温度を上げるとある点でデンプン粒が膨張し、ついには破れて糊化する。加熱に際して始めは粘性がなく白濁しているが、糊化温度に達すると粘稠な半透明液に変わる。これは熱エネルギーによって水やデンプン粒子の運動が盛んになり、粒の外側のミセルの結合エネルギーよりもそれらの運動エネルギーの方が大きくなり、ミセル構造の一部が壊れて隙間が生じるためである。ここから水分子がさらに粒内へ侵入し水和してデンプン分子相互の結合を弱める。ついにはミセルの一部が解けアミロース分子や、比較的枝分かれの少ないアミロペクチン分子などは、水中へ溶け出しゾル化する。温度が高い程ミセルの崩壊は激しくなり、70℃くらいになるとあまり長くないアミロース分子は大部分が水中に溶け出す。一方、網状構造を持った大きなアミロペクチン分子は、間に多量の水を含んで膨張してゲル状になり、ゲルとゾルの混合物となってペースト状を呈するようになる。これを「第一次糊化」という。
デンプンの種類にもよるが、この第一次糊化は60~80℃前後で起こり、さらに90~100℃に加熱すると、いっそうのの粘度低下が起こり完全なゾル状になる(「第二次糊化」)。これは温度の上昇につれてアミロペクチン鎖を支えていたミセル組織がほとんど遊離し、アミロースおよびアミロペクチン分子として水中に分散するためと考えられる。しかし、長い糸状の分子や巨大な分枝分子の一部が、直接あるいは水分子を媒介として結合している部分もあるので、一つの分子を動かせば他の分子もこれに引きずられて動き、膠状となって強い粘性を示す。
糊化しミセル構造を失ったデンプンをα-デンプン、ミセル構造を持つものをβ-デンプンという。β-デンプンは水に不溶でアミラーゼ(デンプン分解酵素)の作用を受けにくいが、α-デンプンは冷水で糊となり酵素によりよく分解される。α-デンプンは湿潤状態で放置すると徐々にβ-デンプンに戻る。これを老化といい、糊はゲル化した時には離漿し、粘稠性を失ってしまう。またα-デンプンを急速に熱乾燥するか凍結乾燥するとその状態を維持できる。


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