製本用接着剤について(3)

3.樹脂系接着剤
 成分による分類ではなく、原料の採集の形からの分類で、植物の分泌物あるいは植物自体からの抽出によって得られるものを含めています。したがってその成分は様々のものがあり、成分としては多糖類や植物タンパクの中に含まれるものもあります。

①アラビアゴム・トラガカントゴム : 共にある種の樹木の幹、枝から浸出する分泌物からつくられる複雑な多糖類の混合物で水に溶けて粘稠な液となります。前者は高級な糊として今日でも使われ、後者は増粘剤やエマルジョンの安定剤として用いられています。またマーブル紙制作の基液としてこれを用いることもあります。

②アルギン酸ソーダ : ある種の海藻(褐藻類)から抽出製造されるもので、一般的には脱水乾燥した白色または黄褐色の粉末として市販されています。水に溶けて安定な粘稠液となり、繊維製品の仕上げ糊や、食品への増粘添加物として多量につかわれています。またマーブル紙制作につかわれることもあります。日本の布海苔やマーブル紙制作に使われるカラギーナン等も、成分は異なりますが海藻から抽出した糊料です。

③天然ゴム(ゴムラテックス) : いわゆるゴムの木から分泌される樹液から作られ、加工されて様々な工業分野で利用されています。合成ゴムが開発されても、その独特の物性は代用出来るものがなく広く使用されています。

④ロジン(松脂) : 文字通り樹液で、その原料により様々なものがあります。単独で接着剤として使われることはほとんどなく、粘着剤として合成接着剤に添加されることがあります。

4.その他
 接着剤としては例外的に無機物であるケイ酸ナトリウムや、鉱産物のアスファルトなども接着剤として使われた(日本では縄文時代後期から晩期にかけて漁具の接着、土器・土偶の補修など)こともありますが、今日ではほとんど利用されてはいません。
(つづく)