三味線の皮

 三味線の皮を見る機会があり、観察するとともに少々調べてみました。三味線の皮として使用されているのは、猫皮、犬皮、カンガルー皮、合成皮があります。現在は犬皮が主流のようです。

・猫皮…お腹の皮を使う。一匹で一丁分。乳首の痕が4つあることから「四つ皮」「四つ乳」とも呼ばれる。
・犬皮…背中の部分の皮を使う。一匹で数丁分。猫よりも皮が分厚い。
・カンガルー皮…一頭からそれなりの丁数とれる。動物愛護から今後主流になる可能性もあるようです。
・合成皮…1980年代に登場。ニーズが少なく皮単価が犬皮よりも割高になっている。

 さて、今回見た皮は「猫皮」でした。しっかり乳首痕の黒い点が4つありました。以下は、奈良県選定保存技術者・橋本一弘氏による手順ですが、製法的にはパーチメントとほとんど同じでした。

三味線皮

①冷凍保存された原皮を解凍し、水洗い・血抜きをする。

②炭酸ナトリウム溶液に3日程度浸漬させる。

③毛抜き、シミ抜きを行う。専用のシミ抜き包丁でこすって毛根まできれいに除去する。

④脱脂を行う。刀の刃を落した「セン」で脂肪分を除去する。

⑤皮を洗浄する。ステンレス製電動式洗濯機(「タイコ」)を使う。昔は樽の中で足で踏んで洗った。

⑥温度箱で脱脂を行う。電子サーモ式の箱に入れて、④で除去しきれなかった脂肪分を除去する。 
 ※温度箱…30~35℃のお湯に炭酸ナトリウムを入れて2~3日保温させるための箱。

⑦脱脂を繰り返した後、薬品の成分も抜く。

⑧水切り、皮の裏を調整する。

⑨モミ材の上で浮かし張り乾燥する。釘を天地左右対称に打つが、皮一枚あたりで72~78本の釘を打っていく。1時間に5~6枚、1日に約40枚仕上げる。なお、浮かし張りするのは板の染みがつかないようにするため。

⑩屋内で陰干しする。夏は1日、冬は3~4日。

⑪天日干しする。夏は1時間、冬は3時間強。

⑫釘を抜く

⑬余計な部分を断裁し、用途、等級等によって選別して各職人(三絃師)に届ける。

 拡大画像を撮ってみると、毛穴が横に3つ並んでいるのが猫の(猫全般的に言えるのかは不明)特徴のようです。比較のために手元にあった仔牛、山羊、羊を加工の仕方によって見え方はだいぶ違ってきますが、一応掲載しておきます。

【参考】
https://www.mukouyama.jp/shamisenn-kawa.html
http://www.livex.co.jp/okonomi/9604/top.html